2020年度(2021年度入試)からの「大学入学共通テスト」、第3回はそれに伴う入試改革についてです。

 

前回

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文部科学省のHP 大学入学者選抜改革について (PDF)

高大接続改革の実施方針等の策定について(平成29年7月13日):文部科学省

 

参考 同 平成30年度大学入学者選抜実施要項 (PDF) 

入学者選抜実施要項:文部科学省

 

 

5 入試制度の名称変更と改革


 高大接続システム改革会議「最終報告」の策定を受けて、「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」と題して「大学入学者選抜に係る新たなルール」がうたわれています。

 各大学が入学者選抜をする際に「学力の3要素」を多面的・総合的に評価するものへと改善することが求められています。

 具体的には「一般入試」「AO入試」「推薦入試」の見直しです。

 

(1)「AO入試」⇒「総合型選抜」

 「大学入学者選抜実施要項」(以下「実施要項」)の「知識・技能の修得状況に過度に重点をおいた選抜とせず」の文言を削除し、「各大学が実施する評価方法等又は「大学入学共通テスト」のうち、少なくともいずれか一つの活用を必須化する」となっています。

 学校独自の評価方法として「小論文、プレゼンテーション、口頭試問、実技、各教科・科目に係るテスト、資格・検定試験の成績」があげられています。

 また「志願者本人が記載する資料(活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書)を積極的に活用する」とあります。

 

*発展:すでに高校の総合学習では「ポートフォリオ評価」(学習に使用したグッズをファイリングして学習プロセスを評価する)が行なわれています。

 

(2)「推薦入試」⇒「学校推薦型選抜」

 「実施要項」の「原則として学力検査を免除し」の文言を削除して、「調査書・推薦書等の出願書類だけでなく、各大学が実施する評価方法等又は「大学入学共通テスト」のうち、少なくともいずれか一つの活用を必須化」します。

 

 「AO・推薦入試で入学した学生の学力」を問題視する声は前々からありました。

 学校現場としては、「調査書と面接だけで合格」「2学期開始前に合格が決まって燃え尽き」だと学校の秩序が(笑)いやいや生徒が大学に行ってから困るので、学力試験必須化と合格発表の後ろ倒し(後述)は有り難いです。

 

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こちら

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 しかし、続きがあります。

学校長からの推薦書の中で、本人の学習歴や活動歴を踏まえた「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関する評価を記載すること、及び大学が選抜に当たりこれらを活用することを必須化する。

 

よよ?

 

 現状でも国公立大学の推薦書はA4表裏びっしり記述しますが、「人物」「学業」など「くくり」は大きめでした。この文言だと学習活動の記録を3観点から詳細に記述することになります。

 

先生、仕事が増えますよ!

 

*発展:私立大学の公募制推薦入試、関東は志望理由書や面接を重視する大学が多いと聞きますが、関西は評定平均値を点数化し「基礎学力検査」を課す学力重視型が、規模の大きい大学に多いです。そうした大学の推薦書フォームは比較的簡素でした。

 

(3)「一般入試」⇒「一般選抜」

 従来はほぼ筆記試験一発勝負でしたが(もちろん大学は今も調査書も評価していますよね?)、今後は「調査書や志願者本人が記載する資料等の積極的な活用を促す」となっています。

 つまり、ペーパーテストでは「「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を測り、調査書で「主体性」を評価しましょう、ということです。

 ということは、調査書に学力の3要素について達成状況を観点別に書く必要があります!

 今の調査書はA4表裏、各学年の学習状況に特別活動の記録などが記載されていてスペースはありません。そこに観点別を書くとなると収まり切らないです。二枚組みですかね。

 さらに「本人が記載する…」は、先述の「ポートフォリオ」でしょうか。当然添削する必要があります。一般入試で?

 

先生、さらに仕事が増えますよ?!

 

*発展 文科省は調査書の電子化も検討するそうです。なお現在の調査書の様式は「実施要項」のリンクの中にあります。

 

 また、こうも書いてあります。

「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」を的確に評価するため、「大学入学共通テスト」の積極的な活用を図るとともに、個別大学における入学者選抜においても教科・科目に係るテストの出題科目の見直し・充実などに取り組む。

(中略)

 例えば、国語を中心として、複数の素材を編集するなどして、自らの考えを立論し、さらにそれを表現するプロセスを評価できる記述式問題の導入・充実に向けて取り組む。

 

 「知識を吐き出す」問題はやめてください、ということです。

 また「受検生に英語の試験を課す場合、4技能を総合的に評価するよう努める」ともなっています。

 この思考力・表現力重視の入試問題や英語の外部検定利用は、すでに一部大学で実施されています。

 つまり、個別入試は暗記だけではない、より思考力や主体性が問われるものになる、ということです。

 

入試が難しくなる?!

 

*発展:あんまり言いたくないですが、入試難易度と入試問題の難易度に相関関係があります。

*発展:大学入試センターが私立大学に記述式の問題を提供するのは可能だそうです。しかしそれを使う大学は同じ日に入試を行う必要がある模様で、現実的ではなさそうです。

 

 

6 出願時期、実施時期、合格発表時期の後ろ倒し・前倒し


 「総合型選抜」は、出願を現行の8月1日以降から9月1日以降、発表も11月1日以降に、「学校推薦型選抜」は現行通り11月1日以降出願、発表は12月1日以降と明記されました。

 「一般選抜」は、開始は現行通り2月1日からですが、試験と手続きを年度内に終わらせるとしています(従来は4月まで可能)。


 問題は「共通テスト」の成績提供時期です。

 「共通テスト」の実施期日は、1月中旬の2日間、マークシート式問題と国語、数学の記述式問題は同一日程で、当該教科の試験時間内に実施します。

 当然、採点により時間がかかるので、成績提供時期は「現行の1月末から2月初旬頃から、1週間程度遅らせることを検討する」(平成29年度入試の場合、私立1月31日、国公立2月2日)とあります。

 

むむ?

 

 現在私立大学の多くは「センター利用入試」を実施しています。受験生には大学に行かなくていいし受験料も安い、マークミスのチェックにも使える、大学も人件費が節約できて多数の出願者が期待できる、とお得な入試です。

 

 しかし、データ提供が遅れるとなれば事情が違います。

 

 国公立の前期入試前にセンター利用の合否が発表できるかが微妙だと、出願が減る可能性があります。

 また国公立大学と併願関係が強い私立大学は、国公立大学の前期試験前に合否を明らかにして、早めの手続きを待ちたいものです。

 さらに「共通テスト」はマーク式と記述式の成績を「一括提供」します。記述式や英語の成績は段階別ですが、一般入試では1点の差で何百人の合否を決する必要があります。

 

 このデータ提供の遅れと段階別評価から、私立大学には「共通テスト」は使いづらいのでは、という意見も出ています。

 

日本私立大学連盟

 

www.shidairen.or.jp

*発展:多くの私立大学はセンター利用方式で国語は「近代以降」のみの利用でしたが、「共通テスト」は「国語」一括提供になります。

 

 

 まとめ

 

 2016年5月に出された文部科学大臣のメッセージ「教育の強靱化に向けて」に、

 

 「ゆとり教育」か「詰め込み教育」かといった、二項対立的な議論には戻らない。知識と思考力の双方をバランスよく、確実に育むという基本を踏襲し、学習内容の削減を行うことはしない。

 学校教育のよさをさらに進化させることを目指し、「学校教育を通じてどのような力を育むのか」を明確にして育成する。
 「アクティブ・ラーニング」の視点は、知識が生きて働くものとして習得され、必要な力が身に付くことを目指すもの。知識の量を削減せず、質の高い理解を図るための学習過程の質的改善を行う。

 
 とあります。

 

教育の強靭(じん)化に向けて(文部科学大臣メッセージ)について(平成28年5月10日):文部科学省

 

 確かに知識は学力の大前提、思考力もプレゼン能力も不可欠、共同作業も必要です。「学力の3要素」「英語4技能」も身につけたいです。

 高校はそれを養い、適切に評価して大学に伝え、大学は生徒にその力が本当についているかを試す。仰る通りです。小手先の受験テクニックで大学に合格しても意味がありません。

 

 しかしそれらすべてを高校で完成させ、大学入試で評価するのは欲張り過ぎ、「学力の3要素+4技能」の新たな「詰め込み」にならないか心配です。

 今後プレテストが実施されるので、高校現場がパンクしないように、入試で何をどの程度評価するか、精査してほしいです(切なるお願い)。

 

*発展:今の学校は学力向上以前の仕事が多すぎです。『週間東洋経済』の9月16日号を読んで下さい。しかも私の知り合いは部活や授業準備より生活指導の方が多いです。